フランスにおける臓器摘出の条件「推定による同意」は正当化できるか?
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概要
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フランスの「生命倫理法」には、「死者からの臓器摘出は、本人が生存中にそのような摘出に対する拒否を知らせていない限り、実施することができる」(推定による同意)とある。この「推定による同意」という考え方のうちには、暗黙のうちに、臓器提供の義務が含まれているように思われる。しかしこのことは、フランスで「公の秩序」が要請するとされる「人体の不可侵」「人体の不可処分」という倫理原則に矛盾する。というのも、人体の尊重から導出されるこれら二つの原則に従えば、まず第一に、臓器提供という行為を義務とすることはできないし、次に、拒否の不在を自発的同意と見なすことはできないし、最後に、死体の利用の際には家族の同意を必要とするからである。この点に関して、もう一つの重要な原則、「連帯性」の原則によれば、臓器提供の義務は正当化されるかもしれないが、それでもやはり、人体の利用に際しては「推定による同意」ではなく本人及び家族の自発的同意が必要であることに変わりはない。ただし、「連帯性」という言葉を自己と他者、すなわち個人と社会の区別を越えた次元で捉えるならば、臓器移植が単に他者への贈与であるばかりでなく自己自身への贈与でもあるという点で、「推定による同意」が「連帯性」により正当化される可能性はあるだろう。
- 日本生命倫理学会の論文
- 2002-09-17