ストレス反応と学習・記憶 : 末梢のアドレナリンが中枢に及ぼす影響を中心に
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概要
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ストレス社会とも呼ばれる現代社会において、ストレスにいかに対処していくかということが重要な課題である。ストレス場面においては、われわれの学習や記憶の機能にも影響が及ぶ。このようなときに記憶の働きが高まることは、つねに良い結果をもたらすとは限らず、PTSDのような臨床的な障害につながる場合もありうる。本論では最初に、歴史的に異なる学問領域で研究されてきたストレスと情動という2つの用語の関係を整理した上で、ストレスや情動にともない、記憶のはたらきが高まる場合があることを指摘した。そして、こうした場面で記憶が増強されるメカニズムには、末梢身体に生じた強い興奮性の反応が関わっているらしい。末梢の興奮が中枢機能に影響を及ぼす上で、媒介的役割を果たすと考えられてきたのが、末梢を循環するアドレナリンであり、迷走神経などの求心性繊維である。アドレナリンが迷走神経繊維の受容体に直接作用するという従来の説に加えて、本論では、アドレナリンによる心臓血管系機能の活性化が、圧受容器から発した求心性の神経線維を経由して、脳へとフィードバックされる可能性を指摘した。これら2つの機能系が同時並行的に機能することで、中枢へのフィードバック効果をより強く持続的なものにしているかもしれない。そのフィードバックの結果として、情動興奮が高まるだけでなく、学習や記憶といった側面にまで影響が及ぶことがあるらしい。つまり、ストレスや情動にともなって生じた末梢身体反応が、中枢の情動機能に加えて、学習や記憶の機能を高める作用を及ぼす可能性があると推定できた。
- 2006-03-31
著者
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