中国古代的世系与譜法 : 兼与日本相関制度的比較
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概要
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中国伝統文化の重要な構成要素である中国古代の出自知識は、大宗についての出自知識と小宗についての出自知識の二大類型に分けることができる。この二大類型は歴史背景や形成過程、社会的基礎、規則の内容、そして機能の現れ方を異にしている。二種の出自の類型と対応して、二種の異なる譜牒記録の形式である大宗譜法と小宗譜法が存在する。大宗の出自知識は理想的色彩を濃厚に有しているために、大宗の系譜記録法は聯姓の記録と化す傾向があり、他方、小宗の出自を知ることの目的は自分の一族と他の一族の境界を明確にすることにあるため、小宗の系譜記録法は実際五世代以内の宗族規模の実態をかなり客観的に映し出すものであった。日本の古代の出自知識の伝統はそれなりに古いが、中国式の大宗出自や大宗譜法を生み出すことはなかった。初期の日本における口頭で伝えられた出自や文章で記された出自は言うに及ばず、その形成年代がおよそ唐代に重なる海部氏系図、和気氏系図などにも、大宗出自や大宗譜法の明確な理念が存在していたことを示す証拠はない。これらの系図中に見られるのは、局所的な系譜関係はほぼ明確なのに、全体の出自が不明確な親族集団ばかりである。この種の曖味な出自についての曖味な記載は、せいぜい父系出自が形成途上または完成途上にあることを表すのみであり、中国式の大宗の系譜記録法とは言えない。日本には「同族」の観念があるが、原則の上でもまた実践上も、中国の宗族制度のように小宗の出自に対して「五世則遷」(五世代を経たら除外する)という数量的な制限は存在しない。日本の民間に広く存在する家族の出自記録の中にも、中国式の小宗譜法の基本的特徴を体現するものは見あたらない。中日両国の古代の出自知識と系譜記録法は、個々の細かい点においては多少の共通点や似通った点があるものの、日本古代の出自制度の中には「一大宗、四小宗」という最も核心となる理念やその規範が存在せず、それゆえに全体としてみれば日本の「宗」や「族」の制度と中国の類似する制度の間には、根本的な差異が存在する。中日両国の出自知識と系譜記録法の間に一連の差異が存在するのは、両国の有識者や系譜職人がそうした文献の編纂技術において異なる見解を有していたことによるものではない。(実際、両国の歴史上、形式が非常に近似した系図や譜牒が存在してきた。)その真に深い原因は、異なる歴史発展様式の基礎上に形成された両国の生活実態-それには文化伝統、家族構造、民間習俗、財産観念、法律制度等の側面が含まれる-が、異なる類型に属していることに存するのである。
- 2006-03-30