環境教育および食育教材の開発に向けて : "持続可能な開発のための教育"の視点からの教材設計
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概要
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本稿の目的は,筆者の開発しようとする環境教育および食育教材の設計思想についてまとめることにある。議論内容はおよそ2分され,まずは環境教育について理念的な検討を行い,続いて教材のブループリントを示すこととする。環境教育は国際的に,また日本においても長い歴史を有しているが,近代的な意味での環境教育の概念は1977年のトビリシ会議において確立した。さらに,1992年の地球サミット,1997年のテサロニキ会議を経て,環境教育の概念は"持続可能な開発のための教育"という範疇で理解されるようになった。こうした経緯の考察から,環境教育における重要な2点を認識することができる。第1は,"気づきから行動へ"と表現されるように,環境教育においては参加や行動が重視されるということである。参加や行動を教育によって引き出すためには,何よりも関心を引き出すことが大切である。知識の一方的な伝達ではなく,環境の中で体験をしたり,感じたりすることが必要なのである。とりわけ幼児期におけるこのような体験等は,環境教育を進めるにあたって最も重要であるといえる。第2は,"持続可能な開発のための教育"という視点の重要性である。そもそも環境問題は複合的な問題なのであり,他の諸問題との関係性をとらえる必要がある。あまりに狭く環境問題をとらえると,あたかも自然環境を守ることだけが重要であるかのごとく錯覚してしまうおそれがある。持続可能な開発という視点から環境問題を広くとらえ,一見すれば矛盾しているようにも思える諸問題を両立させる努力をすることが,真の意味での環境問題の解決なのである。本稿では"厳しく判断された中庸"という概念で説明を行っている。この2つの視点は,本研究で開発しようとする教材に具体的に組み込む必要がある。第1の視点については,まずは教材の対象者を小学校児童とし,さらに教材の準備や運営のあらゆる局面で小学校児童が主体的に取り組めるような配慮を行うこととする。第2の視点については,環境問題と食間題を教材に同時に取り込み,環境教育と食育を統合させる試みを行うこととする。以上の教材設計方針に従って,具体的には次のような教育教材の開発を進めている。すなわち,(1)小学校児童自らが集めた廃棄物素材から生ごみ処理箱を作製する,(2)生ごみ処理箱を利用して給食残飯を堆肥化する,(3)自ら製造した堆肥を活用して野菜の栽培を行う,(4)収穫して食し,また学習全体のまとめを何らかの形としてまとめ上げる,というものである。
- 鹿児島大学の論文
- 2005-12-26
著者
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