「集合的写真観察法」に基づく教育実践(第18回社会調査の方法に関する研究会:質的調査の教育実践)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
「社会調査士」制度の創設に伴って,質的調査の教育方法が問われるようになっている.何をどのように教育したら良いのかが重要な課題と認識されるようになっているのである.参考事例の一つとして,1994年度より私がゼミで行っている「集合的写真観察法」に基づく教育実践を取り上げる."写真で語る:「東京」の社会学"と題するこのプロジェクトは,学生たちが,私たちが生きている社会,その中でうごめいている人間,現実の細部の中に宿っている「社会的な意味」や「人々の意図」をくみ取って,文字通り動詞型の「社会学すること(Doing Sociology)」に内発的・積極的に取り組める方法(新しいビジュアル・リサーチ・メソッド)として,開発し実践しているものである.「集合的写真観察法」は,個々の写真に写り込んでいる集合意識や集合現象をくみ取り,様々な実証データを収集して,社会学的に分析することを目指している.同時に,それら1つ1つの諸断片が相互に関連性を持って「ある種の物語」が紡ぎだされていくことをも想定している.小作品「群」が全体として1つの作品として自立し,モノグラフに相応しい内実を獲得していくところに,「オムニバスとしての『東京の社会学』」が構想される.「集合的写真観察法」によって,学生たちは「東京」と「東京人」に対するセンス・オブ・ワンダーとソシオロジカル・イマジネーションを質的に高めて,見え隠れしていた社会のプロセスと構造を可視化し可知化していくのである.
- 2005-12-05