夢解釈の方法 : 芥川龍之介「夢」の解釈
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概要
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小論は夢解釈の方法を、芥川龍之介晩年の短編「夢」(昭和元年)に即して実際に遂行する試みである。すなわち、作品「夢」の構成に着目しつつ分析し、その隠されたテーマに母性に対する作者の屈折した思いがあることを読み取る。その方法は「夢」というキーワードに着目して、全体の解釈を哲学的解釈学に基づき、夢を解釈する手法を挿入しつつ、文学解釈本来のテキスト解釈、特にこの場合は、ストーリーにおいて相互に絡み合う夢と現実との双方の接点にある、モデルを殺す夢の背後の、原初的な母性に対する憧れを読み取る。そして、捨て子体験を持つ芥川龍之介が、その生育史において特に最も始めに出会わなければならない母親性と出会えなかったことが、母性に対する強い憧れと、自分と世界全体の存在に対する深刻な疑いを生じ、結果的に自殺に至ったことを明らかにして、文学的手法の一典型である生育史に基づく解釈へと橋渡しをする。
- 日本赤十字九州国際看護大学の論文
- 2005-03-01