航空会社の経営行動比較 : 民営化前後に見るBAとJAL
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概要
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郵政民営化に見られるように、わが国においてこのところ民営化の議論が再び注目されている。特に民営化によってもたらされる企業体質の変革が問われている。本論は、航空会社が経験した企業体質の変革に向けた民営化前後の経営行動をBAとJALの比較を通して考察する。同じ1987年に民営化したBAとJALをみると、BAは好業績を継続できる企業に成長し、JALは不安定な業績から抜け出せない企業となった。その原因は民営化の過程で明らかになる。BAは低迷した状況を克服する大胆なリストラと体質改善を経て民営化を成功させた。一方JALは特に大きな問題もなく民営化を成し遂げた。その結果、BAは航空サービス事業に絞り込んだ戦略に向かい、JALは関連事業の拡大を進める戦略に向かった。両社はなぜそのような違いを見せたのか。BAは危機的状況を克服するために外部の人材を積極的に登用し、全く新しい価値観とパワーを組織に取り込んだ。この異質な人材と危機意識が経営資源を集中させる戦略に向かわせ、結果として変化に適合できる企業体質を作り上げた。一方JALは、比較的安定した成長の中で同質的な経営者によって運営された。そのことが関連事業の拡大を通して成長させる戦略を選択させ、結果として変化に対する柔軟性に欠けた企業体質を作った。