介護保険見直し(2005年度)にともなう施設利用者による調理人件費の負担についての検討 : 福祉サービスの「市場価格化」を問う
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概要
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2000年から開始された介護保険の見直しが行われ,その一部が2005年10月より実施され,2006年4月から全面実施されることとなった。見直しの一つとして介護保険対象の施設利用者に居住費の負担が新たに求められることとなり,また食費がこれまでの食材費に加えて調理人件費も利用者負担とされたため負担増となった。これには低所得者にたいする軽減措置が設けられているものの,特に調理人件費の利用者負担は社会福祉サービスの理論的根幹にも関わるほどの厚生労働省(以下では厚労省)の大きな政策転換といわねばならない。厚労省はその理由として,将来の介護保険財政を見据えて「介護保険給付の対象を介護に特化」するとともに「在宅と施設との負担のバランスをとるため」等と説明している。果たしてこの説明通りならば,食事の調理は施設介護の一環ではないということになり,理論的矛盾といわねばならない。また在宅高齢者の生活実態と施設利用者による調理人件費負担が必ずしも整合するとはいえないことも明らかである。それどころか在宅高齢者は生活援助(訪問介護)としてホームヘルパーの調理を1割負担で利用することが出来る点では在宅と施設の負担は今や逆転現象を呈している。この度の施設利用者に対する負担増の背景には,単に財源対策や在宅と施設との「負担の公平性」等に止まらない厚生労働省の政策意図があるものと考えざるを得ない。それは福祉サービスの市場価格化である。介護保険見直しの目的や全体像との関連もあわせて検討することとしたい。
- 2006-03-17
著者
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