マレーシアにおけるコーポレート・ガバナンスに関する問題点
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概要
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マレーシアでは,1998年以降上場企業のコーポレート・ガバナンスの改善に取り組んできた。それは,主として,取締役会および監査委員会の機能と構造を改善することであり,具体的には,取締役会長とCEOの職務を分離し,執行取締役と非執行取締役の役割を峻別するとともに,取締役会内委員会として監査,報酬および指名の各委員会を設置する,まさに欧米流のガバナンス・システムの導入であった。しかし,マレーシアの上場企業は,所有と経営が分離していない家族経営企業が半数以上を占めていることから,このような企業環境に欧米流のガバナンス・システムをどのように定着させるかが重要な課題であった。そこで,マレーシア上場企業の現状を把握するために,2003年度の証券取引所上場企業100社のマニュアル・レポートにもとづく実態調査を実施した。この調査では,所有と経営の分離していない家族経営企業が調査対象企業の約55%を占め,かかる企業では主要株主の企業経営への影響が大きく,とくに取締役会や監査委員会の構成に問題があることが明らかになった。上場企業は,全体としてコーポレート・ガバナンスの改善に積極的に取組んではいるものの,現時点ではガバナンス規程の形式的な遵守にとどまっていることを把握することができた。今後は,マレーシアの企業が,欧米流のガバナンス・システムを定着させることが経営の質やパフォーマンスの向上および市場競争力を高めることになることを認識し,ガバナンスの改善に主体的に取組むことを期待したい。
- 2006-03-31