親報告と観察による幼児期の利き手の測定
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概要
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利き手は大脳半球言語野の左右差と関連するといわれているが、幼児期初期の利き手の出現を測定した研究には、測定法上成熟した段階の測定法との一貫性がないという問題があり、利き手の出現と言語の出現を関係づけた研究は進んでいない。本研究は、児童から成人に対して行われている質問紙法による利き手測定を親報告に置き換え、直接観察することにより利き手測定の妥当性を検討し、さらに得られた利き手の測定値と言語測定値との連関を試験的に分析したものである。18カ月児36名と30カ月児36名の結果から、親報告の高い信頼性と、親報告・観察による利き手測定の高い妥当性がしめされた。親報告は観察値に比較して、全体に右利きへの判定に傾き、30カ月児の場合は、中間的な利き手について右利きか左利きかに偏った判定をしやすい特徴があったが、親報告によるLQ(利き手指数)と観察によるLQには、r=0.812(p<0.0001)の高い相関がみられた。LQ60以下を非右利き群、LQ60を越えた者を右利き群とした場合、右利きか非右利きかについての親報告と観察での利き手の群別け一致率は80.5%であった。親報告・観察によるLQと言語獲得段階の得点の連関を検討した結果、30カ月児では有意な相関はなかったが、18カ月児の場合、観察値LQと言語得点にr=0.693 (p<0.0001)、親報告LQと言語得点にr=0.606 (p<0.0001)の実質的な相関があった。観察値のLQ60による利き手群と性別群の言語得点を分散分析で比較した結果、18カ月児の言語得点の利き手群差・性別差が有意であった。右利き群が有意に高い得点をしめし(F=6.20; df=1;p<0.05)、女児群が有意に高い得点をしめした(F=4.16;df=1;p<0.05)。語彙獲得の遅れをしめす者が、18カ月児の右利き男児に1名、同じく非右利き男児に3名あった。観察による利き手測定値が、言語認知発達との連関を測定する上でも有効であることがしめされた。
- 1999-03-30
著者
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