「介護者支援政策」再考 -日英政策展開の比較-
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概要
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論説(Article) かつて「介護地獄」ともいわれた高齢者の介護を担う家族の負担は、介護保険制度の導入によって大きく軽減された。国民に新たな負担を求めたにもかかわらず介護保険制度が一定の評価を得ているのは、高齢者だけでなく介護者の支持があったからに違いない。しかし、これからも在宅で介護を担い続けていく介護者に対し、要介護高齢者への介護サービス提供という手法を中心とした従来路線で十分な支援といえるだろうか。 このような問題意識を持ち、本稿ではまず、要介護高齢者支援手法とは別建て方式で、介護者独自のニーズを踏まえた個別の支援策を強化している英国の政策動向に着目した。そして、その背景、政策当局の認識を分析し、これを我が国の状況に重ね併せながら比較検証し、問題提起を行った。 第1は、介護者には要介護高齢者向けサービスの拡充だけでカバーできないは独自のニーズがあり、要介護者支援策と並ぶ介護者支援策を確立する必要があることである。 第2は、「要介護者のための介護者支援」にとどまらず「介護者のための介護者支援」、すなわち「介護者の生活の質」まで含む戦略の重要性ということである。 第3に、介護者支援のための戦略には経済的支援等も含めた総合性が求められるが、本稿では、特に介護と生活の両立を図る福祉サービス面からの支援がまず求められると考え、それを実現するための介護者支援福祉サービスについて、最後に若干の提案を行った。