マツバガイの活動パターン
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概要
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岩礁性潮間帯中潮亜帯から高潮亜帯にかけて生息するマツバガイの習性および活動パターンについて, 向島臨海実験所近傍の観音鼻海岸において主として1977年7月から8月にわたり調査を行なった。本種は露出した岩面と岩のわれ目の中とに静止場所をもち, 帰家習性を示す。往復路は互いに異なった道筋をたどることが観察され, 帰家の機構はかなり複雑なものと推察される。また露出岩面に生息していた小型個体が生長に伴い近くのわれ目を静止場所とすることも観察された。行動距離は1日当り平均119cmであり, この値は光および潮汐条件の組み合わせによって変化した。光および潮汐状態が異なった組み合わせの観察期間2組(各々TYPE-AとTYPE-Bと名付けた)を選んで互いに比較した。TYPE-Aでは日没直後が高潮となり, TYPE-Bでは日没時と最干潮時が一致している。冠水時の行動個体数を比較すると昼間よりも夜間に多くの個体が活動し, 空気中に貝が露出した状態では昼間は全く動かないが夜間は冠水時よりも多数の個体が活動した。これらの結果から, マツバガイは夜行性が強いと言うことができる。行動の継続する間, 活動量には変化が認められた。進路の垂直方向要素は, 被水冠水状態では昼夜にかかわらず潮汐の上下方向に一致し, 露出状態で日没を迎えた場合は下方向であった。すなわち, 活動量の変化は, これらの垂直方向の動きの転換時に対応している。以上, 本種で得られた結果と他種カサガイの報告を比較すると, 潮汐と昼夜の条件に対する行動のリズム, 方向, 帰家習性の程度などにおいてマツバガイは固有の活動パターンを示している。
- 日本貝類学会の論文
- 1979-04-30
著者
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