オナジマイマイの地理的變異(金丸先生還暦祝賀記念號)
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概要
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1. オナジマイマイには地色に淡黄と紫褐とあり, 又帶の有るものと無いものとあり, 黄は劣性, 帶と紫とは各々優性因子によつて生じ, この三因子は複對立の關係になつていることが知られている.2. 68産地から83の集團標本を得, その中の黄無帶・黄有帶・紫無帶・紫有帶のものの率を調べたところ, 總べて上の遺傳理論とよく一致する.3. この種の地理的變異は從來の諸研究者が種々の陸産貝類について見たことと一致する.4. 近接地の集團は一般に良く似ているが, 時として著しく違うこともある.これはこの類の自然集團が小さく, 隔離の影響が強く, 殊にいわゆるライト効果の強力のためと思われる.5. 遠隔地の集團は一般に異なつているが, 時として殆んど同様のものがある.これは偶然の一致と思われる.6. テントウムシやマイマイガの種々の形質の地理的變異で著しく現われている漸次の移行, いわゆるclineは陸産貝類では殆んど見られないで, 形質の移行は一般に不規則になつている.これは貝類の移動能力が乏しく, 生殖範圍の遙かに小さなことに關係があるに違いない.7. 同一産地から別の時と季節に繰返し採集した集團標本には, その構成に變化を見なかつた.即ちHardy-Weinbergの法則が成り立つ.これは上の四型の間に無選擇の交雜が行われ, 且つ適應能力に甲乙のないことを示すものである.
- 日本貝類学会の論文
- 1951-05-31