寄主穿孔深度と寄生蜂産卵管長の間の軍拡競走 : 資源サイズとトレードオフの影響(<特集>軍拡競走理論と検証)
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概要
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穿孔性の昆虫やゴール形成者のように餌とレフュージを兼ねる植物組織(資源)内で寄生を免れる生物を対象として、寄主の穿孔力と寄生蜂の産卵管長の間で展開される軍拡競走の様相をニコルソン・ベイリー型モデルで予測した。モデルの特徴は、軍拡競走形質との間にトレードオフのある形質(内的増加率)だけでなく、相乗効果を発揮する形質(種内乗っ取り競争、寄生回避)もあることや、種子やゴールなどの資源のサイズ(寄主の密度依存的競争に影響する)を考慮した点である。これまではあまり注目されてこなかったカオティツクな挙動にも注目した。軍拡競走形質と相乗効果を持つ形質の助けもあり、穿孔が深いタイプと産卵管が長いタイプがそれぞれ寄主と寄生蜂の集団を席巻しやすく、穿孔深度と産卵管長の最終的な集団平均値を高くした。しかし1.資源が大きい、2.穿孔(競争)のコストが高い、3.寄生蜂が不在または低密度、のいずれかのときには、穿孔が浅い寄主タイプが集団に残るため、穿孔深度の集団平均値がやや小さくなった。穿孔が深く競争に強い寄主タイプおよび産卵管の長い寄生蜂タイプのみの集団になった場合には、カオスや擬周期など不安定になりやすかった。これらの大まかな傾向は、寄生蜂の産卵管長に伴う種内競争での優劣の仮定にかかわらず見られた。産卵管長と種内乗っ取り競争の間に相乗効果があるときには、資源が大きいときに寄生蜂が絶滅しやすくなり、続いて寄生を免れる必要がなくなった寄主集団では、穿孔コストにより穿孔も浅くなった。反対に、産卵管長と種内乗っ取り競争の間にトレードオフがあるときには、資源サイズが大きいときでも寄主と共存し、軍拡競走によって寄主は穿孔が深く寄生蜂は産卵管が長くなった。寄主-寄生蜂系における軍拡競走が個体群動態と平行して、他形質とのトレードオフだけでなく資源サイズに大きく左右されることが示された。
- 日本生態学会の論文
- 2006-04-25
著者
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