歴史の教訓 : 日系カナダ人とカナダの市民的自由
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概要
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第二次世界大戦中の日系人強制移動および収容はアメリカ・カナダ両国において市民的自由の明確な侵害であった。1988年には、アメリカおよびカナダ政府はこの事件に対しリドレス(謝罪および補償)を行なった。アメリカとカナダのリドレス運動の最大の違いは、カナダのリドレス要求がカナダの憲法および法律の改正を含んでいた点にある。本論文は日系カナダ人の戦後40年間の歴史的不正義を正すための闘いを追うものである。日系カナダ人は第二次世界大戦当時から、強制移動に抵抗し、財産の売却に抗議し、国外追放に反対する裁判を起こして、政府のいわれなき人種差別に対抗しようとした。戦後30年を経て、1977年の移民百年祭を契機にリドレスヘの運動が復活した。1980年に全カナダ日系人協会が設立されて間もなく、日系カナダ人は憲法論議に参加して「権利と自由に関するカナダ憲章」の人権保障の重要性を訴えた。また、1987年には「戦時措置法」に代わる「緊急事態法」の制定に際し立法審議委員会に代表を送り、緊急時の行政の権力濫用を防げるような人権擁護の厳しい法を作ることに貢献した。どちらの場合も、過去の不正義の体験に照らして人権の法的保護の重要性を訴えたという点で、日系人はユニークな役割を果たしたと言えよう。
- 2000-03-31