ヨネ・ノグチ : 実績と役割
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概要
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明治以来の日本詩人の中で Yone Noguchi こと野口米次郎(1874〜1947)は, 西脇順三郎(1894〜1982)と並んで, 当初英語で詩を書いたことで有名になった。これは極めて稀なことでもあり, 日本ではこれら二人の「詩人としての海外での名声」を誇張する嫌いがある。最近出版された Yoshinobu Hakutani 編の Selected English Writings of Yone Noguchi(二巻)は野口の英詩文を再評価する機会を与えてくれる。野口の第一, 第二詩集はよく英語を知らないで書いた珍妙な作品から成る。こうした詩集がアメリカで出版されたのは, 日本人で英語を書くということが珍重されたためだと判断される。第三詩集以後の英語はかなりこなれたものとなるが, 英詩として特筆すべきものではない。野口は, 十一年にわたるアメリカ生活を切り上げて日本に帰ってからは自称「日本主義の宣伝者」となり, 日本文化の英語を通じた海外紹介に努めたが, 野口が取り上げた日本文化は俳句(発句), 浮世絵, 能楽などあまりにも「日本的」なものであり, しかも野口のその理解は浅かった。それが最終的には野口を戦争謳歌に駆り立てた。
- 1996-03-31