クリントン政権のアジア・太平洋における政策の展開
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概要
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クリントン政権は米国の安全にたいする当面の重大な脅威がなくなった現在, 冷戦のコストから解放され, 米国の資源と関心を冷戦後の新たな課題に集中できるかにみえる。しかし, 新政権は深刻な国内問題をかかえ, 米国民の内向き指向と外交政策の優先順位についてのコンセンサスの欠如はリーダーシップの発揮を難しくしている。また, 「ソ連の脅威」の消滅は米国内世論をまとめるのを難しくしているだけでなく, 同盟諸国に対する米国の規制力の後退をも意味し, 同盟諸国の協力もかつてのようには期待できない。そうした内外の状況変化をふまえて, クリントン大統領はアジア重視姿勢を打ち出した。また, アプローチとしては, 単独主義, 二国間主義に加えて, これまで以上に多国間主義を重視することを明らかにした。理念的には, 民主主義, 人権の拡大, 経済競争力の強化が安全保障に密接につながっているとの考えが示されているが, このような安全保障観と理念にもとづく「市場重視民主主義国家共同体拡大戦略」(strategy of enlargement)は, アジア諸国, とくにアセアン諸国や中国とのあいだで摩擦を生み, この地域の不安定要因となる可能性がある。
- 上智大学の論文
- 1994-03-31