アメリカの応用科学 : 歴史的展開
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概要
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アメリカでは伝統的に実用的な科学研究が良しとされてきた。アメリカの文化は常に研究のための研究というよりは, 実生活の役にたつような応用科学を支持してきたのである。偉人の科学者として知られているベンジャミン・フランクリンにしても, トマス・エジソンにしても, 彼らのイメージは真理の探求者というよりも「発明家」である。文化体系もまた発明や工夫につきものの肉体的労働や身体の危険をいとわないといった側面を有しており, 自分の手を生産的に用いることを貴いとする。実用科学技術をめぐる問題の一つに, 機密保持の問題がある。科学技術はその性質上すべての人に情報が公開されて始めて発展し得るが, 同時に軍事的あるいは商業的理由によって非公開とすることが望ましいという矛盾を含んでいる。この矛盾を解決するためアメリカは二つの方策を考えだしたが, それは(1)個々の科学者の身許調査と(2)特許制度であった。アメリカの教育制度も応用科学者を育成するようにしくまれており, 社会はこのような科学者を尊敬し優遇する。教育機関は多様であり, その数は極めて多い。また研究のための資金源も多様であり, 助成をおこなう政府機関も多い。日本とアメリカの共同研究体制には問題が多く, 例えば技術の軍事利用や商業利用に関しても見解の食いちがいが見られる。アメリカは世界中から政府関係の研究施設にも学者を招き入れるが, 日本では困難な状況にある。
- 上智大学の論文
- 1990-03-30