ツバル環境問題をめぐる内発的側面からの一考察 : 廃棄物処理の現状と課題
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概要
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地球規模で生じうる一連の気候変動に伴う海面上昇の結果、世界で最初に沈むかもしれない国として、研究者のみならず、マスコミを通じて広く一般的にもツバルの存在は知られている。ツバルは国土面積が極めて狭く、海面からの最高地点が4メートルにも満たないようなサンゴ礁で構成されたいわゆる環礁国である。そのため、その繊細な島の環境は、気候変動の影響を最も受けやすいのである。気候変動は、主として大陸諸国を中心とした産業活動に起因するとされている。そのため、ツバルをめぐる環境問題は、「外発的な」側面ばかりが注目されている。しかし、実際に現地ツバルを訪れてみると、気候変動による影響よりもむしろ国内で発生している別種の環境問題の深刻さが見えてくる。それはとくに首都フナフチで顕在化しているような廃棄物処理の問題である。環礁国という脆弱な環境の中で、首都への人口集中、土地不足、および人々のライフ・スタイルの変化といった「内発的な」要因が、廃棄物の処分困難な状況を生じさせ、環境に負荷をかけているのである。したがって、ツバルの環境問題を把握するには、気候変動の影響など単に「外発的側面」からの考察のみでは不充分である。かりに100年後ツバルが水没することなく現状を維持したにしても、人間の生活に適さない環境となってしまっては意味がない。すでに多方面から議論されている外発的な側面のみならず、現実化した廃棄物処理問題という「内発的側面」からの考察の必要不可欠性を指摘することが本稿のねらいであり、また現地調査研究を踏まえての最終的結論である。
- 2005-04-26