社会的共通資本論の一考察 (1)
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概要
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今日深刻な問題になっている環境破壊は、戦後日本の経済成長の負の成果ともいうべきものである。本稿は、この問題を検討していくための予備作業として、先行研究者である宮本憲一氏と宇沢弘文氏の諸研究を考察しようとするものである。宮本氏は主に産業公害について研究し、不変資本充当上の節約に対抗して地域住民による内発的発展が必要であると主張した。これに対して宇沢氏は主に自動車公害について研究し、マイカーの運転手が公害を引き起こす主体であるために、地域住民どうしの対立が生じてきていることを指摘した。両氏が研究した環境破壊の質に相違はあるが、両氏は、民間資本と国家機関の行為が利潤追求のために地域住民の生活環境を破壊してしまったことを強調している点では共通していると考えられる。今日では産業・自動車公害以外にも、消費行為により廃棄物問題などの生活公害が引き起こされている。いわば、あらゆる地域住民が被害者であり加害者であるという情況が生じている。そのような現状において、両氏の研究は、地域住民が主体として自らの生活環境を創造していくための示唆を多く含んでいよう。
- 大東文化大学の論文
- 2002-10-27