フラップ手術後の創傷治癒過程について : オートラジオグラフィーによる歯肉上皮及び歯肉結合組織の再生様式について

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フラップ手術後の創傷治癒について,とくに歯肉上皮,及び歯肉結合組織の再生様式を検討した。実験モデルとして90g前後のウィスター系雄性ラットを70匹用いた。上顎左側M_1からM_3にかけて,口蓋側歯肉をフルシックネスで剥離した。右側は対照側として無処置のまま残した。術後,2時間,4時間,16時間,32時間,64時間,128時間ごとに計7回にわたり,経時的に屠殺した。検索方法としては,1.創傷治癒過程を術後2時間より128時間まで,経時的に病理組織学的に観察した(H-E染色)。2. ^3H-thymidineによる歯肉上皮の基底細胞の銀粒子の標識状態より,DNA代謝活性を検索した。3. ^3H-prolineのuptakeによる標識銀粒子の分布密度よりコラーゲンの合成状態について検討した。4.上皮基底細胞の細胞標識率は剥離歯肉の創縁断端部より計測し,銀粒子の有する標識細胞の割合を,標識指数(L.I.)として算出した。得られた結果はつぎのごとくである。1.病理組織所見より,歯肉上皮の再生は,術後約64時間から128時間までに,正常な歯肉上皮構造が再生されることが示された。2. ^3H-thymidineによるオートラジオグラフィーの結果より,歯肉上皮再生初期には,剥離歯肉縁断端部より比較的遠隔の部位に上皮細胞の増殖活性が高まり,経時的にそれらが創傷断端部に近づくことが示された。また,線維芽細胞の増殖活性が高まり始めるのは,上皮が再生し,根面に接する64時間近くであった。3. ^3H-prolineによるオートラジオグラフィーの結果より,組織学的に上皮が創傷部を閉鎖し,線維芽細胞の増殖活性の高まる64時間後においてコラーゲンの合成も盛んになり,128時間後も継続していることが示された。4.標識指数(LI)は実験側では対照側に較べて,4時間より128時間まで高い傾向を示した。そしてそのピークは16時間前後であった。
特定非営利活動法人日本歯周病学会の論文
1988-09-28

フラップ手術後の創傷治癒過程について : オートラジオグラフィーによる歯肉上皮及び歯肉結合組織の再生様式について

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