Fusobacterium nucleatum由来の細菌性内毒素に関する研究 : とくに歯周疾患との関連について
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概要
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歯周疾患における細菌性内毒素(bacterial endotoxin)の役割とその作用機序の一端を解明することを目的として,先ず全唾液中における内毒素量を測定し,つづいてFusobacterium nucleatumからの内毒素の分離と精製およびその生物学的活性,Hela細胞に対する細胞毒性,好中球走化活性,歯周疾患患者における坑内毒素抗体価,また内毒素頻回注射によるラット歯周組織の病理組織学的変化について検索を実施した。その結果,全唾液中に含有される内毒素量は歯垢蓄積量や歯肉炎の程度と関連のあることが示された。歯肉溝および歯肉盲嚢内に常在するFusobacterium nucleatumからの分離内毒素標品は強い生物学的活性を示し,好中球に対しても走化活性を示すが,HeLa細胞に対する毒性は,そのLD_<50>濃度がおよそ500μg/mlと比較的低いことが示された。また本内毒素標品を抗原として被検者血清中の坑内毒素抗体価をELISA法により測定した結果,特異抗体活性はIgM画分に存在し,しかも歯周疾患の進展程度とこの活性の強さには関連が認められた。さらに内毒素標品を非免疫ラットに頻回注射した際には歯肉の高度の炎症,osteoprogenitor cellの変性,壊死ののちに破骨細胞による骨吸収を認めた。一方,内毒素であらかじめ免疫処置を施したラットに内毒素標品を頻回注射した場合には,歯肉にArthus型の過敏反応を示す組織像がみられ,非免疫ラットと比較して早期に高度の骨吸収像が認められた。
- 特定非営利活動法人日本歯周病学会の論文
- 1985-06-28