モロッコの水と社会変容 : サレ旧市街の事例
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概要
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本稿の目的はモロッコの都市社会が生活用水の利用をめぐって、その管理主体がイスラーム共同体から保護領政府へ、そして独立後は国家へと大きく移行する過程で、どのように変容し、また残存したのかをサレ旧市街を事例としてとりあげ、考察することにある。サレは、ブー・レグレグ川を挟んで首都ラバトの対岸に位置しており、その名前は古代フェニキア人が彼らの言葉で Sala (岩) と名づけたことに由来する。イスラーム都市サレが誕生したのは、イスラームがモロッコに広まった8〜11世紀、1030年のことであり、建設以来イスラーム社会の構造と文化を色濃く持ち続けてきた。サレの年平均降水量は500ミリメートル程度である。大西洋に面しているため、海洋からの空気に恵まれ、気候は湿潤で温暖である。11月から3月にかけては雨季となるが、その後の4月から10月までは乾季となり、雨はほとんど降らず乾燥して熱い。サレは利用可能な水源の多様性と街の歴史の長さから、生活用水の供給と利用方法がさまざまであるが、上下水道事業の管理主体の変遷という観点から時系列で3つに大別できる。まず第1に1912年以前、つまりフランスによる保護領化以前、第2にフランス保護領下の1912年から独立までの1956年、そして第3に1956年の独立以降現在までとなる。
- 大東文化大学の論文
- 2001-03-31
著者
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