乳幼児の発達に関する縦断的研究 : 行動特徴,神経学的要因,育児環境との関連性
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概要
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神経学的要因や行動特徴などの個人差が,養育者,養育環境との相互関係の中で,どのような発達過程をたどるかを検討する目的で, 26例の母子について出産前から3才時までの詳細な追跡調査を行ない,以下のような結果を得た。1. 周産期の要因は,その後の知的発達にほとんど関連性を持たないのに対し,3カ月時における神経学的異常や発達指数はその後の知的発達と大きい関連性をもっていた。2. 新生児期の行動特徴として3つの因子が抽出された。とれらの因子は周産期要因,神経学的要因,育児環境,知的発達とある程度の関連性を持つことが示された。3. 乳児期の行動特徴として9つの因子が抽出された。これらの因子は,周産期の要因とはほとんど関連性が認められないが,神経学的異常,刺激の多少にあらわされる育児環境,その後の知的発達とは関連性が認められた。4. 妊娠出産に対する否定的な感情,家庭内での葛藤状況,同胞の養育に対する気がかりなど養育者の潜在的な不安の有無は,その後の発達に累積的な影響を与えていた。5. 3才時の問題行動に対する危険因子として,乳児期における見知らぬものへの慣れにくさ,不規則性,活動性などの行動特徴があげられた。また問題行動を示す児の母親には出産前から引き続いてなんらかの育児不安があるものが多く,不安尺度も高値を示した。
- 神戸大学の論文