大腸上皮性腫瘍腺口形態(pit pattern)のフラクタル解析 : pit patternの定量評価と病理組織診断との対比
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概要
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大腸のpit pattern診断学は,拡大内視鏡で観察される大腸粘膜表面の腺管開口部幾何学模様(腺口形態:pit pattern)から,病変の病理診断を推定するものである.これまでに,病変の腫瘍・非腫瘍判定におけるpit pattern診断の有用性についてはコンセンサスが得られているが,腫瘍の良悪性判定,癌のsm浸潤および浸潤度判定に対する有用性については統一的見解がえられていない.その主たる理由として,pit pattern判定が観察者の主観に基づく形態パターン認識により行われていることがある.本研究では,大腸腺腫(36病変),粘膜内癌(22病変),sm癌(34病変)のpit patternをフラクタル解析により定量評価(客観化)し,算定されたフラクタル次元により大腸上皮性腫瘍の良悪性,sm浸潤,sm浸潤度の推定が可能かどうかを検討した.良悪性別のpit patternフラクタル次元は,腺腫(1.38±0.09),低異型度癌(1.50±0.12),高異型度癌(1.54±0.09)であり,腺腫と高・低異型度癌との間には有意差があった.また,高異型度癌のフラクタル次元は腺腫・低異型度癌に比べ有意にフラクタル次元1.4以上のものが多かった(p<0.001,p=0.03).しかし粘膜内癌,sm浅層癌,sm深層癌のpit patternフラクタル次元は,いずれの組み合わせでも有意差はなかった(それぞれ1.45±0.14,1.48±0.11,1.51±0.07).以上の結果より,pit patternのフラクタル次元から大腸上皮性腫瘍の良悪性,および癌の異型度推定は可能であり,フラクタル解析を用いた客観的なpit patter診断学の確立が期待される.他方,フラクタル次元から癌のsm浸潤や浸潤度を推定することは困難であり,これらの診断についてはpit pattern以外の所見も加味した内視鏡診断学が必要と考えられた.
- 新潟大学の論文
- 2005-08-10
著者
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