乳腺粘液癌のMUC2ムチンコア蛋白発現と細胞増殖能との関連に関する免疫組織学的研究
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概要
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乳腺原発の純型粘液癌は他の乳癌に比べ予後良好な癌とされている.これまで同癌の細胞増殖能が他の乳癌に比べて低いことがその良好な予後を規定する因子とされてきたが,近年のムチンコア蛋白の研究の進歩により,MUC2ムチンコア蛋白発現も同癌の生物学的悪性度を規定している可能性が想定されてきた.本研究では,これら2つの因子にどのような関連があるかを細胞単位で明らかにすることを目的とし,乳腺純型粘液癌におけるMUC2コア蛋白発現および増殖細胞マーカーであるKi-67蛋白発現を二重染色法を用いて検討した.外科切除乳腺原発純型粘液癌12例を対象とし,浸潤性乳管癌14例をコントロールとした.純型粘液癌では浸潤部の12/12(100%),乳管内非浸潤癌巣(CIS)部の6/6(100%)にMUC2発現がみられたのに対し,浸潤性乳管癌でのMUC2発現は1/14(7.1%)のみであった.純型粘液癌のMUC2発現細胞率は,浸潤部で53.2±21.5%(22.3〜85.4%),CIS部で12.8±8.2%(O〜21.7 %)であった.純型粘液癌浸潤部では,MUC2発現細胞と非発現細胞のKi-67indexはそれぞれ5.5±3.1%と9.6±5.2%であり,両者間には有意差があった.他方CIS部のKi-67indexは,MUC2発現細胞と非発現細胞とで有意差はなかった(3.6±2.7% vs 4.7±3.0%).浸潤部とCIS部との比較では,MUC2発現細胞のKi-67indexに有意差はなかったが,MUC2非発現細胞のKi-67indexは浸潤部がCIS部に比べ有意に高値であった.以上の結果より,純型乳腺粘液癌の浸潤癌部では,MUC2発現細胞は非発現細胞に比べ細胞増殖能が低い癌細胞であり,同癌は細胞増殖能の低いMUC2発現細胞をその構成細胞としていることが他の乳癌に比べ生物学的悪性度が低いことの一因となっていると推定された.しかし,同癌のMUC2発現細胞率にはバラツキがあることから,同癌の中にも生物学的悪性度に違いが生ずる可能性も示唆され,今後続型粘液癌に占めるMUC2発現細胞の割合とリンパ節転移,予後との関係についての検討が必要と考えられた.また,CIS部ではMUC2発現細胞と非発現細胞とで細胞増殖能に違いがなかったことから,MUC2発現と細胞増殖能との関係に癌の間質浸潤がどのように関わってくるかを解明することが,続型乳腺粘液痛の発育進展を明らかにする上で必要であると考察された.
- 2004-12-10
著者
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