オオバナノエンレイソウの減数第一分裂における動原体の微細構造
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概要
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オオバナノエンレイソウの花粉母細胞における減数第一中期から第一後期の動原体の構造を光学顕微鏡および電子顕微鏡を用いて観察した。光学顕微鏡による観察では,動原体は小粒としてみとめられ,その直径は約0.3μmである。減数第一中期から後期にかけて,動原体は染色体から突出し,染色体腕とは染色糸状構造物で連絡している。各相同染色体には隣接した2個の小粒(姉妹動原体)がみとめられ,その全体の幅は約1μmである。電子顕微鏡による観察では,動原体は染色質(染色体)より低い電子密度を示し,染色質構成繊維と同じである直径10-20nmの繊維により構成されている。動原体は染色質のカップ状のくぼみの中にあり,構造的には輪かくの不明瞭なボール形であるが,その中に電子密度の高い繊維の塊がみとめられる。以上観察された動原体の微細構造は,高等植物においてこれまでに報告された結果と一致している。電子顕微鏡では,姉妹動原体に相当する2単位構造が動原体内にみられない。一方,光学顕微鏡では,十分観察可能な大きさであるにもかかわらずボール状構造はみとめられない。このように,観察結果が異なる原因を電子染色法の観点から考察した。動原体は第一中期から後期にかけて明らかにその大きさが減少する。動原体の大きさは第一中期で約2μmであり,第一後期では約1μmである。同時に,動原体内の高電子密度の繊維塊の数が第一中期から第一後期にかけて次第に増加する。したがって,動原体の大きさが減少するのは,動原体構成繊維の凝縮がおこるためであると考えられる。
- 千葉大学の論文
- 1982-12-20