核小体形成部の銀染色
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概要
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近年,哺乳動物染色体の核小体(仁)形成部(NORs)を差別的に濃染する簡便な方法(Ag-I法)が開発された(Bloom and Goodpasture, 1976)。この方法が植物染色体のNORsをも差別的に濃染するか否かを確かめるために,Ag-1法を種々の植物種に適用した。その結果,調べたすべての植物種で染色体NORsは銀で濃染されることがわかった。銀染されたNORsは黄色または褐色に染まった染色体腕上に黒褐色あるいは黒色の濃染部としてみられた。数種の植物では,濃染されたNORsの位置はin situ DNA/RNA雑種分子形成法により示された18S+25S ribosomal RNA genesの染色体上の部位と一致した。これらの結果は植物のゲノムにおいても銀染色法はNORs(ribosomal RNA gene sites)を差別的に濃染することを示している。TCA,HClおよび酢酸処理を行なっても,NORsの銀染色性は変らなかった。このことは銀が酸性のNOR-特有タンパク質を染色していることを示唆している。染色体組の全染色体が末端部にNORsをもつがその活性能力にちがいのある植物種を低温下におくと,銀濃染されたNORsをもつ染色体の出現頻度が染色体組の染色体間で変った。この知見はNORsでの銀濃染タンパク質の存在がその部位に存るribosomal RNA genesの活性と関連しているという仮説を支持しているとおもわれる。
- 千葉大学の論文
- 1981-12-20