現代青年の生活意識における自己疎外の構造(I) : 「自己を疎外する行為」に関する質問紙の検討
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概要
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本研究では,現代青年の日常生活世界における認識の特徴を「自己を疎外する行為」という視点から明らかにしようとした。「自己を疎外する行為」とは,自らが主体的に行動した行為でありながら,その本質を考えてみると,本来個人が主体的・創造的に行為するものとは異なってしまい,結果として自己の主体性の存在を否定してしまっているような行為のことである。本研究では,この「自己を疎外する行為」が,現代青年の日常生活の中においてどのような要因と関連し,どのような構造を示しているのかを検討した。検討にあたっては,まず「自己を疎外する行為」と考えられる40の項目によるオリジナルな質問票を用意し,大学生2年生以上793名に回答してもらった。それを因子分析を用いて検討を進めた。結果は,「自己を疎外する行為」の構造として9つの因子を抽出した。これらの因子の検討から,「自分らしさ」を模索しようと取り組みながら,自ら思考し創造しようとするのではなく,「マス情報の話題・流行への敏感な対応」を主とし,「占い的生き方規定情報」などを受け入れて行為している現代青年の姿が描き出された。また,それぞれの行為性に及ぼす社会的な圧力には,性別によって違いがあるであろうことが予想され,各々の性によって,どのような要因が自己にかかわっているのかについて,今後検討を進めていく上での方向性が示唆された。
- 1985-12-20