小児期巣状分節性糸球体硬化症の臨床病理学的考察 : とくに予後との関連性について
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概要
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15才未満の小児期に発症した巣状分節性糸球体硬化症(Focal segmental glomerulosclerosis : FSGS) 57例を対象に. retrospectiveに臨床病理学的な面より予後との関連を中心に検討を行った。FSGSの性別,発症年令からみれば8才未満の年少児では女児例, 8才以上の年長児では男児例が多く,腎不全進行例は年少児に多くみられた。臨床像からみると,無症候性蛋白尿として発見された症例は25例あり,経過中もネフローゼ症状を呈さない症例は11例で,いずれも尿所見の正常化はみられなかったが,ネフローゼ症状で発症した32例中14例は尿所見が正常化している。また,ネフローゼ症状を呈した症例に対するステロイド療法の有効例は45例中17例(38%)で,ステロイド抵抗例に対するCyclophosphamide の有効例は26例中8例(31%)にみられ. Cyclophosphamide有効例はステロイド剤有効例に多く存在し,予後はいずれも無効例に比し良好であった。病理像から観察すると,硬化像の糸球体内での局在が血管極部lとみられた44例中25例が腎不全に進行しているのに対し,末梢部のみにみられた12例は腎不全進行例が存在しなかった。螢光抗体所見では45例中35例にIgM沈着がみられ, しかもその沈着がびまん性にみられる症例の方が予後良好な傾向がみられた。また,電顕所見では糸球体上皮細胞の空胞化が特徴的であるが,空胞化の認められる24例中13例は腎不全へ進行したのに比し,空胞化のみられない21例中腎不全への進行例はわずか2例のみであった。