二諦分別論研究(3)
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概要
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8世紀初頭Jnanagarbhaによって著作された『二諦分別論』(Satyadvayavibhanga)は,チベット語訳でしか現存していないため,不明な点が数多く残されている.それら不明な点を解決する手段の一つとしてチベット人による注釈書の活用が考えられる.今回,19世紀に活躍したチベット僧Ngag dbang dpal ldanによって著作された仏教四大学派の二諦説に関する論書Grub mtha' bzhi'i lugs kyi kun rdzob dang don dam pa'i don rnam par bshad paを活用することで,『二諦分別論』に関する以下の三点を明らかにした.1.『二諦分別論』第9偈bcはチベットにおいて異本がよく知られているが,正しいのは本来の『二諦分別論』に見られる偈であること.2.『二諦分別論』のEckel氏のテキストにおいて,bsnanという語が二箇所見出されるが,これはbrnanと修正されるべきであること.3. Ngag dbang dpal ldanは同論書の中で,bDen gnyis kyi dar tikaという名前のみとしてしか知られていないDar ma rin chenの『二諦分別論』に対する注釈書を6回引用するが,その中の一箇所が,別に引用されているbDen gnyis kyi rnam bshad snying po gsal byedと呼ばれる『二諦分別論』の注釈書の内容の一部と一字一句違わず一致する.このことから,bDen gnyis kyi dar tikaとしてこれまで知られてきたDar ma rin chenの『二諦分別論』の注釈書の正式書名はbDen gnyis kyi rnam bshad snying po gsal byedであると想定されること.
- 日本印度学仏教学会の論文
- 2006-03-25
著者
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