顎整形力による顎顔面頭蓋の変形に関する力学的検討 : オトガイ帽装置について
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概要
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矯正歯科臨床において,上下顎関係の不調和を伴う成長発育期の下顎前突症例に対してオトガイ帽装置による顎整形力を用いることがある.その作用機序の解明には,頭部X線規格写真分析,動物実験,ストレインゲージ法および有限要素法などの方法が用いられてきたが,その中でも有限要素法は顎顔面頭蓋に誘発される変位や応力などを解析するのに適している.また,オトガイ帽装置の牽引力は,下顎頭や関節円板に非生理的な力を与えると考えられる.ところが,顎関節を対象とした力学的研究は現在まで見当たらない.そこで本実験では,3次元有限要素法を用いて顎顔面頭蓋をモデリングし,オトガイ帽装置を用いた場合の顎関節部に発生する応力分布状況ならびに下顎骨の変形様相について検討した.小児乾燥頭蓋骨のCTデータから下顎骨の3次元有限要素モデルを構築した.荷重方向は,オトガイ部より下顎頭方向(0°)を基準とし,オトガイ部から上方に10°,20°および下方に10°(-10°)の4方向とした.その結果,以下のことが明らかとなった.1)牽引方向が上方に向かうにしたがって,下顎頭における圧縮応力分布が後方部から中央部に向かうことがわかった.2)牽引方向が上方に向かうにしたがって,下顎骨は下顎角付近で折れ曲がる傾向を示した.3)牽引方向が0°の場合には下顎骨では後方へ転位し,-10°では後方に転移しながら時計回りに回転し,10°では後上方に転位しながら反時計回りに回転し,さらに,20°では反時計回りに回転する様相を示した.4)すべての牽引方向において,下顎角部から下顎枝に至る部分が外方へ彎曲し,左右下顎頭間の幅径が増大する傾向を示した.以上のことから,オトガイ帽装置の牽引力は,牽引方向の違いにより顎関節部における応力分布に相違を生じること,下顎骨が回転を伴う転位を示すこと,および下顎骨に異なった応力分布を生じることが示唆された.
- 2006-03-25
著者
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