家政学領域における実践教育の検討(第2報) : 調理学実験との関連

概要

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調理学と実習との有機的媒体としての調理学実験に着眼し、本学家政科家政専攻の学生に対し実施した7題目の調理実験について、興味度・理解度・実習に対する効果・理論や実習への連係について意識状況の調査を中心に検討した結果をまとめると次のようである。さまざまな要因を配慮しながらまず当世学生の家庭生活に対する概念の不足と無関心さを自覚させると共に高校までの家庭科内容をさらに専門化した家政学領域における調理実習の位置づけを併せて入学時に導入することの必要性がみとめられる。調理実験を媒体として実践科学を含む具象的内容の動機づけを実施することによって本学の真摯な学生気質にも調和して、漸次実習への成果が認められた。特に実験に対する興味や理解、実習に対する効果の尺度別の評価は著るしい上昇がみとめられたことは調理実験の成果が大きいことを示唆したものと推察する。まず総合的な傾向を調べたのち題目に分けさらに実験目的と要点の細目にわたり意識状況を検討し次のような傾向を認めた。1.当初実験に興味を示さない者が8割であったが回数を重ねると漸次目的の把握が確かになり興味があると意識するものが当初の4.5倍に急増した。理解できない者も4%になり理解できる者が3倍強に増加、実習への連係意識も77%程度を示し、実験経験を重ねるにしたがいかなり積極的志向が現れた。2.実験内容によっても学生の意識変化に影響を与えることがわかった。すなわち、1)直観的な判断と観察により実験結果を得やすい項目や比較的実験値に多様性のない場合は学生の意識度は上昇する。2)従来の感覚的方法について共通性を見出し再現性のある考え方を導入した項目では、学生の意識度は高まり特に実習への連係意識に好ましい影響を与えている。3)実験の中で性状の変化などでは視覚で判断する場合より、味覚や嗅覚など鋭敏さを必要とする方が意識状況の結果が低下し、評価が分散する。また一般化され知名度の高い項目は画一的な結果になり、実習に対する効果が特に上昇している。4.実験内容の選択にもよるが今回の場合、従来の調理技術のコツについて実験の中で確認できること、技術力、応用力が向上することなどが実験効果として意識され、合理性、能率化には縁遠い結果がみられる。5.すでに調理経験をもつ内容に関しては、失敗の原因になり易い項目を導入することで再現性の高いコツの解明を即座に認識でき極めて実験の効果が高まる。6.実習に対する実験効果は、いずれの場合にも高い評価が得られ、効果がないと意識するものは殆んどみられなかった。7.実験目的の導入にあたって、すでに調理学の中で得た具体的事項を掲げ、複数による実験活動の中へ共通の基盤を与えると同時にレポートの考察の目標にもなることを認識させることが肝要で、これが不足した場合には意識状況に好ましくない影響を与えている。家政学・家庭科教育に携わる者で実践的能力の育成が大きな柱であることを考えない者は恐らくないと思われる。しかし生活実践の乏しい学生に短い期間の中でたとえ多くの労力と精力を費したとしても、僅かな糸口しか指導できないことを痛感する。技術指導の困難さがますます増長する中で、今回の調理実験の試案は色々な面で好ましい成果が得られた。理論と実習とを恰も車の両輪のごとく組み合わせ、更に実験を潤滑油として両者相互に連係できれば、理解し実践に展開する方向づけが比較的近道になるのではないかと考える。調理実験導入にあたって、理論の指導内容、これに関連させた実験題目の選択、実施目的や要点の取り扱い方、さらに実習への連係方法など、教師側の指導計画や指導方法が、学生の意識に著るしい影響を与えたことはいうまでもない。この点においては筆者自らのこの上もない反省の資料を得ることになった。終りに本研究にあたりご協力いたゞいた本学調理研究室依藤いづみ姉に深謝申し上げます。なお本研究の一部は第62回日本家政学会関西支部研究発表会で発表したものである。
1985-03-10

家政学領域における実践教育の検討(第2報) : 調理学実験との関連

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