拡張型心筋症における心筋の繊維化と炎症像の対比
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概要
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拡張型心筋症(DCM)の病因を探る目的で,本症28例(41±15才)の剖検心での組織像を定量的に検討し,10例(39±8才)の対照群と対比した。左心室横断標本を5分画に分け,各分画について線維化率を計測したところ,DCM例の線維化と分布には症例間で大きな差が見られた。そこで28例を低線維佑群(I群)8例と均等高線維化群(II群) 8例,不均等高線維化群(III群)12例に分けた。また心筋炎の指標としてリンパ球浸潤の程度を一から3+まで4段階に分類し,各群の線維化と臨床所見,炎症所見,心筋変性所見との関係を研究した。3群間に年令,性に差は見られず,いずれの群にも高度の心室腔拡大と壁菲薄化を認めた。線維化率は,対照群6±1%, I群10±3%, II群26±6%, III群33±12%で,対照群に比しII, III群で大であったが(P<0.05). I群と対照群問には有意差を認めなかった。I群では心筋細胞の変性も軽度で,高度の心室肢の拡大や心不全の起源には心筋障害因子が関与していると推測された。I,II群では5例に1+, 2+のリンパ球浸潤を認めたが, III群では1+以上の浸潤を11例(92%)に認め,うち6例が3+で,他の2群に比べて程度が強かった(P<0.05)。この事実から, III群には心筋炎が関与している事が示唆された。
- 神戸大学の論文