都市周辺地域の野外レクリェーション施設としてのゴルフ場の立地特性に関する研究
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概要
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都市周辺地域における緑地整備システムの一環として,野外レクリエーション施設であるゴルフコースを取り上げ,関東地方を対象にして立地上の特性を考察した.(1)大正3年に最初のコースが開設されて以後,昭和20年代末までは1都6県全体で17コースの開設であったが,昭和30年代から急速に建設が行われ,平成元年現在446コースが開設されている.都県別に比較すると,コース数の最多は千葉県107コース,最少は東京都の19コースである.年次別のコース開設数に基づくと,3回の開設ブーム時期があり,これを基準にして開設期を6期に区分することができる.(2)開設ブームの年次を都県別に検討したところ,南部の都県で早く始まり,北部の県で遅い傾向があり,開設ブームは南から北へと進んでいる.(3)ゴルフコース面積は,ホール数とも関連し大小さまざまである.開設期別の18ホール当たりの面積は,第I期が平均66haで最小なのに対し,開設期が遅くなるに従い,面積が拡大する傾向がある.関東平野の平担部から,次第に周辺部の丘陵地・山岳地域に開設されるようになり,地形条件や各県の土地開発規制に関連して面積が拡大したものと思われる.都県別のゴルフコースが占める面積比率は,最大が千葉県で2.17%,最小は東京都の0.66%である.なお,近年は各都県が大規模土地開発に対して規制を行っており,ゴルフコースの新設は少なくなる方向にある.(4)8河川の河川敷を利用して,34の河川敷コースが開設されている.この数は,全体の約8%であり,河川敷がゴルフ需要に応える重要な場所になっている.河川敷コースの規模は,18ホール当たり約53haであり,河川敷以外のコース平均88haと比較すると面積的には小規模である.(5)ゴルフコースの利用制は,メンバーシップ・コースが389コース,全体の87%を占め,パブリック制のコースはセミパブリックを合わせて57コース,13%である.河川敷コースでは,公共性の高い土地の性格を反映して,パブリック制のコースが半数を超えている.(6)高速道路の開通により到達性が改善され,分布が次第に広がり,現在は関東地方全域に分布する状況になっている.高速道路のI.C.からの距離はI.C.から20kmの範囲に302コースが分布している.(7)自然公園内にもゴルフコースは開設されている.特に富士箱根伊豆国立公園の箱根地区には,8コースが集中しており,国立公園利用の面からも重要な施設になっていると見ることができる.ゴルフコースは,オープンスペースの一形態であり,野外レクリエーション施設として,都市周辺部に効果的に開設していけば,地域の有効な緑地として機能すると考える.なお,ゴルフコースの立地の考察に対しては,ゴルフコースが造成されている土地の地形状況,植生,地価などに関しても調査,分析が必要であるが,本論文ではその調査ができていない.立地特性の検討を深めるための課題として残っており,今後研究を進めたい.
- 1992-03-25