住居系市街地における高木の分布特性
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概要
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緑豊かな都市景観を構成するうえで重要となる高木の配置や保全のあり方を探るために,市川市旧市街地で高木の現況調査を行なった.研究結果の概要は次のとおりである.利用用途別分割合では,住宅地62.3%,学校10.5%,公園緑地6.5%,社寺6.4%となっており,主に,宅地の高木に頼っていることが把握された.また,宅地の高木の量にかかわらず,面的な広がりをもつ公共施設(公園や学校)等の存在する地域では,これらの高木の量が地域の緑の量を左右していること等もみられた.これらの結果から,公園整備の遅れている調査対象地域は,今後,都市公園をはじめとする公共施設等の高木による緑の整備,保全をより進める必要がある.また,民有地の高木に関しても永続的な保証を地域制緑地等行政や住民管理の面から検討する必要がある.樹種別には,クロマツが全高木本数の51.6%を占め,市街地中央部の地区に集中して分布しており,他のほとんどの樹種が樹高8m以上10m未満の高木が多いのに対して,クロマツは樹高10m以上15m未満の高木が主体に構成されているのが特徴的である.これは,約100年の長い年月をかけて現在まで保全されてきたことによる.このことからも,クロマツは調査対象地域においてシンボル性や風土性を備えた樹木として,今後も積極的に保全していく必要がある.また高木本数の多い市街地中央部の地区で,ha当り高木本数,1人当り高木本数,世帯当り高木本数等いずれも多いことが認められた.今後,これらの結果を踏まえ,住民意識調査等と対応させた検討も必要となる.
- 千葉大学の論文
- 1986-10-30