健康のパラダイム
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概要
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近代医学は19世紀に方法的自覚をもって成立したパラダイムにもとづいて,理論的な展開がなされ,教育が行われ,そして診察や治療がおこなわれている。それは病気というパラダイムであり,さらにいえば,身体内空間のなかに望ましくない,除かれるべき,独立した実体entityが存在するということであり,その実体によって症状や所見があらわれるとするものである。身体内空間をみることは,患者にはできないので,医療の専門職に全面的に依存することが治癒への合理的手段となる。しかしながら,このパラダイムは多くの面で,矛盾と効果が不十分であることをあきらかにしつつある。なによりも,それは健康を約束しないことに気付かれつつある。これに代わって登場しつつあるのは健康のパラダイムである。これは個人と環境の相互作用において,個人の環境への働きかけの多様性と可能性の高さ,すなわちself efficacyをいう。それを高めるための制度(institution)として医療は再編成されなければならない。
- 日本保険医学会の論文
- 1990-12-15