実験的外傷性白内障の発生機序
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概要
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マウス水晶体前面中央部から経角膜的に針で損傷を与えると,損傷の深さによって異なった反応を示し,特に核周囲帯に達する深い損傷では,3日以内に成熟白内障まで進行する。今回,核周囲帯の損傷の場合には,なぜ急速に白内障が進行するのかを形態学的に検討した。正常マウス水晶体後縫合は,線維細胞末端が比較的浅い指状鉗合を形成して細胞同士が接し合っていた。水晶体に損傷を与えると,核周囲帯線維の細胞膜が崩壊し,細胞質に蛋白凝集が認められた。Evans' blue注入による水晶体内物質移動をみると,マウスでは核を迂回して後極側へ物質が移動するのが見られたが,ネコやイヌでは核をそのまま通過して直線的に後極側に移動するのが観察された。HRPをマウス水晶体に注入すると,皮質線維細胞の走行に沿って後極側に移動した。これらの結果は,水晶体核周囲帯の損傷から前房水が後極側に到達し,これによって後縫合が解離し,ついで核周囲帯線維が崩壊し,ここから混濁が発生することを示している。
- 北里大学の論文
- 1998-02-28