有機リン系殺虫剤散布作業を行っている農業従事者における疫学調査
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
有機リン系殺虫剤は,長期曝露により眼を含む中枢神経及び末梢神経などを障害する。我々は神奈川県下で10年以上有機リン系殺虫剤を散布している農業従事者に対し,健康調査を目的として検診を行ってきた。調査期間は,昭和59年から平成5年までの10年間である。検診は3段階に分けて行った。第一次検診として7435名に自律神経症状に関するアンケート調査,視力,握力,フリッカー値測定,血清コリンエステラーゼ値測定,第二次検診として456名(6.13%)に対して眼機能検査(EOG, ERG),神経学的検査,血液生化学検査を行った。第三次検診では瞳孔反応測定,空間周波数特性測定,血中有機リン濃度測定を167名(2.24%)に行い,最終的に64名(0.86%)を治療対象者とした。脱リン剤を中心とした治療により,異常だった瞳孔所見の改善を来し,血中有機リン濃度が減少した。今回のような検診は,潜在している慢性有機リン中毒者の早期発見,治療に大変有用であると考えられた。
- 1995-12-31