移植片としての胎児 : 妊娠維持に関わる免疫調節機構の解明
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概要
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母体の胎児に対する免疫学的寛容のメカニズムを知る目的で,胎児の主要組織適合性抗原(HLA抗原)に対する母体の抗HLA抗体の産生性と免疫調節体の一つと考えられる母体自己T細胞レセプターに対する抗イディオタイプ抗体(抗Id抗体)の誘導の2点について検討した。抗HLA抗体は,正常妊娠群では22.3%に認められたが,自然流産群では3.3%であった。また,反復流産患者に対して夫リンパ球接種を施行した免疫治療群では,治療後,妊娠維持に成功した症例では80.6%に,不成功例では41.7%に抗HLA抗体の産生が認められ,この抗体の産生が妊娠維持成功の一つの指標となることが示された。一方,免疫治療群12例を対象に抗Id抗体の誘導の有無を調べたところ,治療後妊娠維持成功例では7例中6例に誘導が検出されたが,不成功例5例ではどの症例にも誘導が認められなかった。したがって,この抗Id抗体が妊娠維持の免疫調節体の一つとして重要な役割を果たしていることが示唆された。
- 北里大学の論文
- 1992-10-31