実験的アルコール視神経症
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概要
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1%エタノール水長期飲用によるラットの実験的視神経症の研究を行った。エタノール飲水群は4群に分けられI群は1%エタノール水を平均総投与量で437ml,エタノール量として換算すると18.6g/kgを2週間与えた。II群はI群と同量のエタノールを与えた後,6週間水のみで飼育した。III群は4週間で総投与量1032mlであり,43.9g/kgを与えた。IV群は8週間で1604ml,68.3g/kgを与えた。コントロール群のV群(水のみ自由に与えた)と比較検討した。経過中眼に光を与えて誘発される視覚誘発脳波(VEP)および主として網膜から発生する網膜電位図(ERG)を中心に研究し,その結果はコントロール群と比較された。ERGには全ての投与群に変化はなかった。VEPではN_1頂点潜時が投与後2週間で最短,4週間では投与前レベルに復帰し,8週間には延長を認めた。視神経の病理組織学的所見は8週間飲水群に認められ,大径視神経線維の減少が著明で,軸索の配列の不整,かつ消失も認められた。コントロール群の視神経にはこれらの異常は認められず,また全身状態は投与期間中良好であり特に異常な体重減少は認められなかった。以上からラットのエタノール中毒では,8週間に68.3g/kgが投与されると網膜に異常は認めないものの,視神経に対しエタノール視神経症が発症することがわかった。
- 1988-10-31