中国語と英語を母語とする日本語学習者の漢字および仮名表記語彙の処理方略
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
語彙処理の効率性を中国語と英語の母語の違いで比較するために,漢字二字熟語と外来語の処理効率性(速度と正答率)を測定した。中国語系日本語学習者は,漢字二字熟語の語彙正誤判断を英語系日本語学習者よりも826ミリ秒速く,また7.6パーセント正確に行った。また,中国語系日本語学習者には,漢字の画数の多少による影響が見られなかった。これは,中国語系日本語学習者が,日本人と同様に漢字全体を一つの単位として処理し,英語系日本語学習者は漢字を構成要素に分解して処理する方略を採っていることから生じたと思われる。さらに,通常片仮名で書かれる外来語の処理時間には,母語に関係なく平仮名表記か片仮名表記かの違いによる差はなかった。しかし,正答率については,英語系日本語学習者の方が中国語系日本語学習者よりも15.95%も正確に正誤判断を行った。英語の語彙の発音から日本語の外来語を判断する方略が採れるので,中国語系日本語学習者よりも有利だったのではないだろうか。以上の結果から,日本語学習者は,既習の母語の知識を生かして,次に学習する言語においては最小限の努力で最大限の効果をあげるような処理方略を確立しようとする傾向があるのではないかと思われる。
- 1997-09-01
著者
関連論文
- 学習 3-PD5 外国人日本語学習者の漢字書記エラーについて
- 中国語と英語を母語とする日本語学習者の漢字および仮名表記語彙の処理方略
- 外国語習得の影響要因 : ドイツ語学習の動機か?ドイツ人に対する態度か?
- 仮名と漢字による語彙処理のメカニズム : 日本語学習者の学習歴と言語背景による影響
- A review of psychological studies of kana and kanji processing : A single phonological route to a multiple interactive activation
- 心理学と言語学は矛盾するのか?それとも統合しうるのか? : 松山大学経営学部研究会におけるケス(Joseph F.Kess)教授の講演報告
- Psycholinguistic nature of the Japanese orthography