大学評価における説明責任の研究
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概要
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本論文の目的は,知的遺産を継承し社会的説明責任を果たす人材の育成を提言することにある。知的遺産を継承し社会的説明責任を果たすためには,社会と対話をしなければならない。社会と対話することのできる人材を育成するのは,大学という「場」であり,社会的説明責任を果たすのはまさに研究者として大学を構成する大学人の自覚にもとづく。国立大学法人法が施行され,21世紀COEプログラムや第三者による大学評価の導入等の大学改革が進むにしたがって,日本の大学の人材育成に大きなかげりが見えるようになった。日本の大学改革は,大学を産業の知の拠点とし国家主導の下で人材育成がなされている。本来大学や大学人は,政治上・宗教上その他の権力または勢力の干渉を受けることなく,研究と教育に専念できる人材育成に誇りを持ってきたはずである。しかし,いまの大学人は世事に無関心になったどころか国家主導の大学システムになされるままになってしまった。大学自体がすっかりエネルギーを失ってしまった。何ゆえ大学や大学人は耳目を封じ,意を発することを忘れてしまったのであろうか。いまの日本の大学や大学人が,無関心で際限のない譲歩を繰り返している限り日本国憲法も教育基本法も歪められ,国家統制を強められた中での人材養成システムが確立してしまう。大学や大学人が,広く世界の学術研究の付託に答え,未来を創造する人材育成に資する存在となるために立ち上がらなければならない。自分たちのことは自分たちで決定して行動する。個人としての自律能力を高めながらことの善し悪しを見極め,一般社会からの批判を受け入れ市民とともに邁進する人材の育成を目指すことが求められている。
- 2004-03-31