幼稚園の中の情操教育 : 仏教幼稚園の観察から
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概要
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本稿の目的は,小学校への接続期として重要な役割をもつ幼稚園の現状を理解し,もって情操教育の必要性を現場の日常生活から考察することである。コンピューターや通信技術の発達により,コミュニケーションの幅は広がりつつも直接的な人と人との触れ合いは失われつつある現代において,物質的な価値観から心の価値観への移行をさきがける仏教保育のあり方から,本来求められるべき幼稚園の姿を浮き彫りにできればと考えている。日本の宗教教育に関する論考は少なからず見受けられるものの,その多くは小中学校以上の教育課程を対象としている。そもそも教育というものは,小学校入学で開始されるわけではなく,家庭では家庭教育,そして私立の幼稚園ではそれぞれ特色ある幼児教育・保育が実施されていることを考慮すると,小学校以上に限って宗教教育を論考すべきではないであろう。よって本論文では,経営母体が宗教法人の幼稚園において,その宗教的背景がどのような形で幼児教育や保育に生かされているかを検討することによって,小中学校以上だけではなく,幼稚園での宗教教育の可能性を明らかにする試みの一つとなれば幸いである。用いる調査データは,埼玉県内の仏教系私立幼稚園に通う4歳児, 5歳児を対象とした2003年9月の観察記録である.調査対象である子供が4歳児, 5歳児であるため,保育開始時刻から終了時刻まで1クラスに密着することにより,保育者と子どもの接触を観察することが,主な調査方法となる。仏教教育を積極的に取り組んでいる幼稚園を事例として,その中で保育者がいかに子どもと接しているかの現場状況を明らかにしつつ,同時に,情操教育における紙芝居の役割から今後の文学研究のあり方を考察していく上での序論となることを目的としている。
- 2004-03-31