独居生活を営む軽度痴呆老人の「食行動」 : 安全を保つ観点から
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概要
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本研究の目的は、軽度痴呆を持ちながら在宅に暮らす独居老人の「食行動」の実際を、安全を保つ観点から明らかにすることである。対象者は、痴呆の程度が境界・軽度痴呆の独居老人である。対象者11名の痴呆の判定には、NMスケールを用いた。本研究では、「食行動」を「食物を入手してから調理、配膳して食べるまで」の一連の過程と捉えた。昼食時に観察を行い、本研究者が作成した10項目の食行動の安全性について分析した。痴呆の程度が進むに伴って「食行動」全ての安全性が減少するわけではなく、『食事摂取』と『食卓づくり』は安全が保ちやすい、『保存・廃棄』と『後片付け』は、『調理(ご飯炊き)』に比べて安全を保ちにくいことが明らかとなった。また、NM得点の低い対象者(38〜33点)は、「自分独りで行っている行動」より、他者の関与によって安全に行動できるという特徴がみられた。これらの結果から、痴呆老人が独居生活を安全に継続するためには、「食行動」を一連の過程として広く捉えることと、痴呆の進行に伴う行動の実際を把握することの必要性が考察された。