バブル経済が無かったと仮定した時の日本経済の適正規模試算…採るべき経済政策の一つの指針
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概要
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80年代後半に熱病景気いわゆるバブル景気が発生したが、その後の平成不況が長期化して久しい。日本経済はもはやかつてと同じような経済拡大を実現する条件を失っており、低成長・ゼロ成長に我慢しなければならないとか、バブル景気の結果、過剰生産要素を抱えているから、過剰生産設備、余剰労働力を廃棄して無駄な贅肉を落とさなければ、日本経済の再建はできないという議論が大勢である。そもそも、過剰生産設備といい、過剰労働力というがどれだけの過剰が存在するのか、上の議論の中では十分に説明がない。単純に現在の不況下の収縮した消費と設備投資規模と比較した余剰設備であり、余剰労働であると解している。しかし、適正水準から乖離した状態において生産要素の過不足を判定する解釈は適切なやり方ではない。生産要素の過不足の判定基準は適正な経済活動が実現したときの消費支出・生産規模と現状のそれとを比較したときの過不足でなければならない。現在の不況時点では売残りが生じ、過剰生産とみえても、もし、近い将来経済回復が可能で過剰生産が解消するならば、不況時点の過剰な生産要素が過剰ではなく、一時的にみれば過剰と見られる生産要素でも当分我慢して存続させるのが適切な経済政策である。今日の日本経済の状況をみると、政府は構造改革と呼ぶ経済政策を進めているが、株価も地価も2001年に入ってから更なる下落を続けて信用不安は去らず、消費は回復しないデフレ色が強くなっている。日本経済の実力を過小評価して、角を矯めて牛を殺すという間違った政策をとっていないだろうかという疑問がある。そこで、本論分では、日本経済は今後も十分な拡大が可能であることを前提として、バブル経済が発生しなかったと仮定した時の、自然な実現可能な経済成長率と、株価、地価を試算して、試算値と現在の経済状況とを比較した。その結果、余剰があれば余剰部分を廃棄する経済政策を採ることが適切であり、反対に余剰分が無ければ、適正水準から不自然に収縮した経済活動を正常状態に戻る経済政策を採用すべきである結論が得られる。
- 2003-10-31
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