性差の概念
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概要
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私たちは,ふだん,女性と男性の性別を自然のものととらえ,「この世の中には所詮,男と女しかいないのだから……」などという悟り切ったような浅薄な言い方を耳にすることも,日常まれではない。そして,「女性と男性の間には明らかな性差がある。」というような言説に異を唱えようとするなら,それはなかなかに容易ではなく,かなりの力技が必要となる。しかし,女性と男性の性別はそれほどに自明のものなのであろうか。この問いを看過できないものとして探求する努力が,ここ数十年の間に主としてフェミニストたちによって積み重ねられてきた。「性別」が「性差」へ,「性差」が「性差別」へと難なくずらされていくことは,女性たちにとって極めて日常的な体験であり,歴史的な体験であったから,「性差」の概念を吟味することは,必須の課題であったと言えよう。この論稿は,人間の性を再定義するさまざまな試みを跡づけながら,私たちが今後,「性差」をどのようなものとしてとらえていったらよいのか,その展望を探ろうとするものである。
- 1996-04-01