中国食糧貿易制度の変容と背景
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概要
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中国は膨大な人口(1993年約12億人)を抱えた農業国である。新中国が誕生して以来,食糧生産の発展は基本国策の一つとして重視されてきた。長期間にわたり人口の約80%が農業に従事してきたにもかかわらず,食糧の「自給自足」という目標は達成できなかった。1961年から本格的な食糧輸入が始まり,1989年には最高1658万tに達した。現在でも常に年間1000万t以上の輸入を続けている。他方,新中国成立以来食糧の輸出も絶えず行なわれてきた。1980年代前までは年間100〜300万t台の間で変動していたが,1985年以降飛躍的に増大し,1991年には食糧輸出は1000万tを突破した。このように大量輸出と大量輸入を同時に行なう国は世界でも希であろう。また, 1980年代以降の中国における経済改革・対外開放の進展及び社会主義計画経済体制から市場経済体制への転換に伴って食糧貿易は拡大したが,各分野の改革の進展の不均衡や新秩序の来整備から,需給構造・流通体制価格形成・貿易機構及び制度等の多面にわたって多くの問題が露呈している。対日輸出に限定しても以下のような問題が存在している。(1)輸出量が非常に不安定である。(2)貿易方式や価格の決定方式の変更に起因するトラブルが多い。(3)輸出加工品の質的低下。(4)納期の遅れは近年もっと目立ってきた。したがって,経済改革過程における中国の食糧流通・貿易体制のあり方についての検討が必要になってきている。本稿は中国経済体制の変容と各分野の改革の進展及び中国の食糧政策,生産・流通体制の変遷を踏まえながら,食糧輸出制度とその改革の方向を考察・分析することによって,中国の食糧流通・貿易体制の変容とその背景を明らかにしたい。
- 東京農工大学の論文
- 1995-04-01