M.ハイデガーの初期哲学形成
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
M.ハイデガー(1889〜1976)は二十世紀の初頭に,当時ようやくその歴史的使命を終えようとしていた新カント派の影響のもとで,哲学の探究を開始した。しかし,E.フッサール(1859〜1938)の創案した現象学に出会い,現象学を通して真の哲学の課題と方法を学んでゆく。現象学という基礎があってはじめて,のちのハイデガーの独自固有の思想も可能となったのである。本稿においては,フッサールのもとで我がものとした現象学的方法に依拠しつつ,ハイデガーが独自の存在論を構築する様子を描いてみたい。ハイデガーの探求が現象学の動きの中で新しい一歩を刻印するのは,1927年世に出た『存在と時間』においてであり,この書をもって,ハイデガーがフッサールとは異なった哲学の道を目指すことが明瞭に告げられている。以下においては,『存在と時間』の執筆当時,ハイデガーがマールブルク大学で行った二つの講義に依拠しつつ,ハイデガーの初期思想における最大の成果『存在と時間』を成立させた主たる問題要因を,フッサールとの関係で明らかにする。
- 東京農工大学の論文
- 2001-09-10