わが国公益法人会計の系譜
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概要
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学問として研究する会計学については国境がないが, 実務として行われる会計は法律などで制度化される場合が多く, 国境によってそれぞれ厳しく規定されている。またそれは為政者の意図のみならず風土と歴史に制約されている。制度化される会計を行う基準については権力者や担当の学者の考え等が基準を左右していることも見逃せない事である。公益法人会計基準はその具体的な現われと考えられる。民法制定後の公益法人の会計は主に現金主義会計が行われていたが1977年(昭和52年)から制度化された公益法人会計基準は当時, 総理府から公表されたものであったが官僚の考え方が基盤にあり, これに担当された学者の考え方により制度化されたため, 多くの理論的問題を含んだまま, 基準の実施はほぼ強制された形が取られてきたので, 実務上多くの問題が発生しその改正が求められ具体的に問題点を主張する意見が出始めたのであった。基準が制度化されて早くも5年後に総理府は, やむなく改正に着手せざるを得なかったのであるが, 公益法人会計基準の思考の原点が, 民主主義社会における情報開示の必要性と一致していないため, 改正された公益法人会計基準は, その場しのぎのダブルスタンダードとなって公表されその実施について1987年(昭和62年)から強制されたため, かえって混乱を招いたのであった。平成の時代に入りバブル経済が崩壊し行政改革と規制緩和が必要となり, そのあおりを受けて公益法人会計基準も全面的見直しを迫られたのであり新公益法人会計基準案が発表されたのである。しかし平成14年より実施が予定されていたのであるが延び延びになっているものであり, わが国の会計の制度の問題点と特徴を論じたものである。
- 2004-03-31